vol.3 プロジェクトの夢は大きく

Update: 2023.04.06
#昆布の森再生プロジェクト

「昆布の森再生プロジェクト」についてお伝えしていく本シリーズ。前回のvol.2の記事では、なぜシオノギヘルスケアが天然ガゴメ昆布の再生に向き合うのか?どうやって形になったのか?など、「どのようにこのプロジェクトが誕生したか」についてお話しました。 Vol.3となる今回は、前回ご紹介しきれなかった今後の目標まで続編としてお届けします。昆布の森再生プロジェクト主要メンバーの高野、そして普段は商品の販促企画などを行う福井の2人で、引き続きお送りします。

左:シオノギヘルスケア 高野 / 右:シオノギヘルスケア 福井

プロジェクト名とのギャップが悩みの種

福井:さて、プロジェクトの立ち上げ経緯が分かったところで。「悩んでいる時間の方が多かった」「前途多難だった」と仰っていましたが、現在プロジェクトの中で課題と感じていることはありますか?

高野:課題は小さなことから大きなことまでありますが…。「昆布の森再生プロジェクト」というプロジェクト名をつけたのですが、進めていく中で自分たちの力で天然ガゴメ昆布を再生させることのハードルの高さを痛感しました。地球規模で変化が起きていることに対して、一民間企業の一社員がどこまで変えられるのだろう…、と。天然昆布の復活への使命感から「再生」とプロジェクト名に入れたものの、その重さを時間が経つにつれて感じています。
また、プロジェクト名と、実際に推進している内容にもギャップが出てきており、周りから見ると昆布の森の再生に関係があるように見えなかったり、理解に時間がかかる点に悩んでいます。

福井:なるほど…。確かに、実際にいま活動している内容としては、ガゴメ昆布の養殖生産への切り替えと、乾燥工程を効率化するための実証実験ですよね。一見関係の無さそうな乾燥工程の効率化も生産者さんの負担を軽減することで養殖生産の担い手不足を解消し、養殖の利用促進に繋げていこうとしているので、巡りめぐって、天然ガゴメ昆布の再生へ貢献するはずですが、「自然を復活」という認識を入り口にすると、なかなか遠い道のりですよね。

高野:そうなんですよ!短いスパンで出来ることではないので、どうしても少し遠くのことから始めることになるんです。過去には直接ガゴメ昆布の苗を植えることも試しましたが、すぐにウニに食べられてしまうことも分かったので…。微力ながら良い方へ進んでいると思う一方で、プロジェクトで掲げている「ガゴメ昆布の再生」との距離にもどかしい思いを抱く事が多々あるのが正直なところですね。

福井:難しいテーマなので、長期戦ではありますよね。このプロジェクト自体、何年スパンで考えているんですか?

高野:10年以上は必要ではないかと考えています。

福井:自然が相手なので、なかなかすぐにとは難しいですが、何らかの結果を出したいですね。

高野:話は少し逸れますが、ちょうど私が二十歳過ぎぐらいの頃「砂漠の緑地化」というのが話題になったんです。砂漠を緑地化し、二酸化炭素など大気中の温室効果ガスを閉じ込めよう、と。当時、私もそういったことに興味があって、緑地化に関連した研究をしてみたいと思った時期もありました。そこから約30年経って、海の砂漠化をなんとかしようと思っている自分がいる、と気付いたんですよ。自分の「やりたい!」という思いは巡ってくるんだな、とすごく感慨深く感じました。
海の砂漠化は「磯焼け」と呼ばれています。ただ苗を植えるだけでは、どうにもならない事も分かっているので、昆布の森再生プロジェクトを通してどう貢献できるかを常に考えています。

函館市 椴法華漁港付近の磯焼けの様子(2022年夏撮影)

情熱の原動力はどこに?

福井:ここまでお話を伺っていて、ガゴメ昆布について非常に熱く考えてらっしゃるな、と感じました。ガゴメ昆布の未来について考えるきっかけや、熱い想いを抱くきっかけが具体的にあったのでしょうか?

高野:ガゴメ昆布の未来については先ほど話した「砂漠の緑地化」が根底にありますね。そして、ガゴメ昆布が万が一絶滅してしまうと、シオノギヘルスケアがお客様にお届けしている製品(フコイダンPROTECTシリーズ)の製造が難しくなり、ひいては健康のサポートが出来なくなってしまうので、その危機感もありますね。
そして想いが強まっているのは、様々な学術の専門家・官公庁の方々とお話しして色んな情報を頂けることが一番大きいですね。お話しする中で手に入れた情報と自分の頭の中の考えをミックスさせていくと、すごく想像が膨らんでいくんです。養殖ガゴメ昆布を起点に、どのように函館の皆さん、そして天然ガゴメ昆布の再生にお役立ち出来るか。色んなプランを思い付いては、出来ることから一つ一つ取り組んでいます。

福井:現地に毎年行って、関わっている方々の顔をご存知だからというところも大きそうですね。「あの人のために」というような感じの。
高野:そうですね。我々と接点のある昆布の商社さん、あとは北海道大学の先生方。函館の昆布産業の現状・課題に関するお話も共有いただくので、その中でどんな貢献が出来るかをベースに考えるようにしています。

これからプロジェクトで挑戦したい事

福井:最後に、本プロジェクトを通してチャレンジしたい事や目標はありますか?

高野:学術の先生と話したときに出てきた「ブルーカーボン」というキーワードが気になっていて。植樹して森林を増やすのと同様に、海の中の海藻を増やす事で海中のCO2削減を実現できるというものです。

●ブルーカーボンとは?

藻場、浅場等の海洋生態系により、大気中から海中へ取り込まれた炭素のこと。ブルーカーボンの吸収源として、海草藻場、海藻藻場、干潟、マングローブ林などが挙げられ、これらは「ブルーカーボン生態系」と呼ばれる。ブルーカーボン生態系の光合成により吸収された二酸化炭素は有機炭素として生物の体内を経て、海底に長期に渡って貯留される。

高野:これだけ広大な沿岸面積を持っている日本で、ブルーカーボン、つまり海藻に注目しない手はないだろう、と。
養殖昆布を二酸化炭素を吸収させるために増殖させ、ブルーカーボンのツールにするという取り組みはまだないので、ぜひチャレンジしたいと思っています。

福井:なるほど!確かに最近「CO2排出量 実質ゼロ」と打ち出している企業もありますよね。SHIONOGIグループでも、いま話していたようなブルーカーボンによるオフセットを実現できると、事業とは別角度での社会貢献が出来そうですね。

高野:はい。ただ、森林によるCO2の削減に関しては「グリーンカーボン」として取り組んでいる企業も多く、国の「J-クレジット制度」として認められていますが、ブルーカーボンはまだ認められておらず…。
地域や企業でのブルーカーボンを使った取り組みが増える事で、経済産業省としてもそれを「J-クレジット」に採用しやすくなるそうなので、ぜひ積極的にアプローチしていきたいと思っています。

福井:良いですね。シオノギヘルスケアでも医薬品の容器をリサイクルボトルに変更するなど環境に配慮したパッケージ素材を積極的に取り入れていますが、SHIONOGIグループ全体を見ても製造業という性質上どうしても二酸化炭素の排出は避けられないですもんね…。

高野:はい。ちなみに…昆布の森再生プロジェクトでの個人的野望として“シオノギヘルスケアをカーボンニュートラル企業にしたい”と思っています。一般的にカーボンニュートラルを実現するには、その企業がどれだけ努力しても減らせない二酸化炭素を「J-クレジット」を買って相殺する必要があります。
昆布の森再生プロジェクトを通してブルーカーボンの取り組みを実現できれば、ガゴメ昆布を調達することで自然とカーボンニュートラルに貢献しながら、二酸化炭素の排出権を売ることも可能になります。そんな事業活動と連動したカーボンニュートラルを実現できるよう頑張りたいです。

福井:どんどん夢は広がりますね!こういった話題は我々世代以上に20代、もしくはその下など若い世代の方が関心が高そうですよね。

高野:そうですね。例えば、いま学生の方がスペシャルサイトを見て「やってみたいな」と入って下さると、本当に願ったり叶ったりです。このプロジェクトは本当に少人数で進めているので、私とは違った視点を持って一緒に取り組める方にぜひ参画してもらえるとうれしいです。


さて、vol.2と今回の記事を通してプロジェクトの全貌をインタビュー形式でお送りしましたが、いかがだったでしょうか?養殖ガゴメ昆布を活用して皆さんの健康の手助けとなる商品を製造しながら、函館地域の雇用創出・生産力の安定化、更には地球環境の保全に役立てるような取り組みまで繋がるように…、と大きな夢を掲げている昆布の森再生プロジェクト。
天然ガゴメ昆布の再生はすぐには出来ませんが、まずは養殖ガゴメ昆布で函館の海・道南の海を昆布の森にすることを目標に推進中です。最後に現在の養殖昆布の様子をどうぞ。

函館市 函館市 椴法華漁港 養殖ガゴメ昆布の漁場(2022年夏撮影)

それでは、次回もお楽しみに!

昆布の森再生プロジェクト スペシャルサイト

ガゴメ昆布をつかうから、育てるへ。
シオノギヘルスケアではカゴメ昆布の利用を天然から養殖へ切り替えることで、天然ガゴメ昆布の保護・再生を目指す「昆布の森再生プロジェクト」を発足。
2024年までに本製品の原料を養殖ガゴメ昆布100%に切り替えることを目指しています。

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「フコイダンPROTECT」シリーズは、ガゴメ昆布が自然の厳しさから身を守るためのバリア成分「フコイダン」を高純度で抽出したサプリメント(健康食品)です。Twitterでは商品情報や商品にまつわるストーリー、「函館出張記」などをお届けしています。

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