「かわいい和雑貨さがしさんぽ」シリーズ第二弾では、日々の暮らしに寄り添ってくれる、職人技が光る逸品を探しました。華やぐ祇園エリアから閑静な御所南、そして織物の町・西陣への約8kmにわたるロングコース。手ぬぐい、無添加石鹸、和ろうそく、3つの魅力的な専門店に出会いました。
江戸初期創業、老舗綿布商。永楽屋 祇園花見小路
石畳にお茶屋や飲食店が軒を連ねる祇園のメインストリート・花見小路を歩いていると……

趣のある木造建築に暖簾がゆれていました。

こちらは江戸時代初期の1615(元和元)年創業、老舗綿布商「永楽屋」の祇園花見小路店。創業は400年も前なのですね!京都の街を歩いていると他にも永楽屋さんの店舗を見かけることがありますが、こちらの店舗は2019年夏のお目見え。いちばん新しい店舗だそうです。

1階には綺麗にたたまれた手ぬぐいが整然と並び、白を基調としたシンプルな空間を彩ります。壁には品名やサイズ、広げたときの絵柄がわかるよう説明書きのプレートも添えられています。昭和初期のモダン柄を復刻したものや、花鳥風月を描いた伝統柄、舞妓さんがスキーや釣り、運動会などに興じる光景を描くユニークなシリーズなど、バラエティ豊か!

ざっと数えただけで160種類もありました。節分や梅、桜などの柄もあって春を先取りした気分。手ぬぐいは、ふきんやタオルの代わりに使う日用品というイメージでしたが、スタッフの方から好みの手ぬぐいをフレームに入れてインテリアにする、という楽しみ方もあると教えてもらいました。



店内には手ぬぐいをアレンジしたペットボトルカバーやブックカバー、ティッシュケースカバーのサンプルが飾られていました。風呂敷はバッグにも変身するそうです。針と糸は不要、折ったり結んだりするだけで、実用性のあるオリジナルの布アイテムができるなんて、楽しいですね。飲み物を携帯したくなる夏になったらペットボトルカバーに、ほかの季節はテッシュケースにするなどお気に入りの一枚をさまざまなシーンで活用できるのがいいですね。

2階にはギャラリーがあり、永楽屋さんゆかりの写真や資料、手ぬぐいづくりのお道具類や昭和初期の手ぬぐいも展示されていました。

刷毛や染料のダマやゴミをとるための漉し器、染料と水を合わせて煮るための鍋など昔使用されていた道具が展示されていました。大正時代のものという銅鍋は、色粉(染料)と水を合わせて煮るための道具。ステンレス製の鍋だと焦げ付きやすいため、銅製のものを使っておられたそうです。
100%無添加の手作り石鹸専門店。京都しゃぼんや 奥の工房
続いては、北上して御所南エリアへ。御幸町通沿いにさりげなく置かれたヒノキの看板が目に留まりました。

矢印に従って細い路地を左手に進むと、奥に庭付きの立派なお家が現れました。



こちらの「京都しゃぼんや 奥の工房」さんは、メイドイン京都の手づくり石鹸専門店。オーガニックや自然素材にこだわった、100%無添加の石鹸を作っておられます。 2021年秋に三条高倉から御所南に移転して来られたそう。

靴をぬいで上がると、華麗な透かし彫りの欄間や床の間、襖など和の住宅をそのまま生かした空間で、お友達のお家に遊びに来たような気分に。



壁面には、看板商品である石鹸をはじめ、バスソルトやリップクリーム、製油、北山杉やヒノキで作ったアクセサリーなど、多彩なコスメや雑貨が並んでいました。宇治茶の祇園辻利、老舗喫茶店の小川珈琲、聖護院八ッ橋など、京都の老舗とコラボした「京さんぽ りっぷくりーむ」も。サンプルのキャップを開けてみると、まさに抹茶や珈琲、八ッ橋……思わず食べたくなってしまいそうな良い香りがほんのりと広がります。

石鹸の種類が豊富で、宇治の抹茶や煎茶、水尾の柚子、丹波の赤ワインなど、京都産素材を使った石鹸ばかり!京都のラグジュアリーホテルのアメニティとして使われていて、その縁からお忍びでお店を訪れる著名人も多いそうです。誰もが知る大スターも来られたとか。


お庭には、北山杉の切り株の上に、シアバターやオーガニックオリーブオイルなどの原料が入ったガラスボトルをのせたオブジェもありました。製品に使っている原料がこうして目に見えるというのは安心感がありますね。
家に帰って石鹸を試してみたら、乾燥しがちな季節でもつっぱることなくやさしい洗いあがりでした。
予約制でボタニカルバスソルトづくりやオーガニック蜜蠟のアロマキャンドルづくりなどのワークショップも実施されているそうですよ。
心静まる和ろうそくの灯り。香・蝋燭老舗 中村商店
緑豊かな京都御苑でちょっとひと息ついて、今度は織物の町・西陣へ。五辻通を西へと歩いていると、京町家の軒上に和モダンな意匠の看板を発見。


こちらは、和ろうそくとお線香の専門店「香・蝋燭老舗 中村商店」。ここ西陣で100年以上の歴史を紡ぎ、京都の北方を守護する鞍馬寺や茶の湯のお家元も御用達とのこと。
これまで「和ろうそく」という言葉を聞いたことはあったけれど、誕生日ケーキに灯したりする洋ろうそくとの違いを意識したことは皆無でした。中村商店のご主人とお母様が、はんなりとした京ことばで和ろうそくについて教えてくださいました。


洋ろうそくと和ろうそくは、原料から異なります。石油を原料とし、中の糸芯に火をつけるのが洋ろうそく。一方、和ろうそくの原料は植物由来の自然素材。火を灯す芯は、和紙をくるくると巻き、さらに灯芯草を巻いたもの。すべて手づくりなのだそう。

燭台に置いてあった和ろうそくに実際に火を灯して見せていただきました。風がなくても炎がゆらりゆらりとゆらいでとても幻想的。和ろうそくの優しい炎を眺めていると、次第に無になるようで、心が静まります。巷では近ごろ焚火や暖炉がブームですが、それと通じるものがあるのでしょう。

京友禅の職人さんが一本一本手描きするという「絵ろうそく」は、椿や梅、すすきなど四季の可憐な草花が細やかな線で表現されています。火を灯してしまうのが惜しくていつまでも飾っておきたくなるほど。和ろうそくはひとつひとつ手づくりなので、洋ろうそくに比べてお値段は張りますが、特別なときにぜひ使いたいものですね。

こちらの和ろうそくは、その名も「古都乃彩」。左から「南天と椿」「セッコク」「鉄線」「野ばら」「ブルーベリー」とのこと。和の花に限らないので、和室だけでなく洋室にも合いそうです。

十二か月の花がモチーフの「あかりの花めぐり」は、和菓子にそっくり!

桜をかたどったろうそくをひとつ買って帰り、水を入れたガラスの器に浮かべて火を灯すと、灯りが落とす影まで桜の形!
時間が経つのがいつもよりゆっくりと感じられ、極上のリラックスタイムとなりました。
手ぬぐい、石鹸、そして和ろうそく。それぞれのお店から、商品に対する真摯な思いと誇りが伺えました。日々の暮らしにこうした上質なものをセレクトして取り入れてみれば、より心豊かに過ごせそうですね。