ガゴメ昆布に魅せられて。家族と仲間と漁を愛する人生。

一緒に働くご親戚の皆さんが「パパ、パパ」と呼ぶその先にいらっしゃるのは小市公三さん。5人兄弟の長男として生まれ、15才で漁師の跡を継ぎ、その使命感から昆布漁の道に進んで50余年。
漁の合間も、準備と研究に励むうち、いつの間にかこの仕事が好きで人生を捧げるまでに。ガゴメ昆布漁を生業とする小市さんを訪ねました。

Update: 2020.12.25
#生産者について

01良質な昆布を育む、
北海道・函館の海。

昆布は北海道を代表する食材のひとつ。国内生産量の95%が北海道産、なかでも函館産はこのうちの約2割を占め、生産量・生産高ともに日本一を誇ります。函館の海は、津軽海峡、太平洋 、噴火湾の3つの 恵みを 受け、西からは対馬海流(暖流)、東からは親潮(寒流) が流れ込み、複雑な海岸線もあずかって豊富な漁場を形成しています。
そんな、昆布はもちろん四季折々の海の幸を育む豊かな環境の中で、小市さんが生業とするガゴメ昆布漁も行われています。

02この道50余年。希少な
ガゴメ昆布を追い求めて。

ガゴメ昆布は、生産量が北海道で生産される昆布全体のわずか数パーセントという非常に希少な品種です。生育条件も他の昆布と比べて非常に繊細なため、まとまって採れるエリアは函館の海の中でも、東海岸の一 部に限られます。さらに、漁が解禁されるのは年にひと月程度で、天候や波の状況など厳しい条件をクリアしなければなりません。
しかも、ガゴメ昆布は水深10m以上の深い場所に多く育成しているため、収穫が非常に困難なのです。それでも長年研究と工夫を重ね、ガゴメ昆布にこだわり続ける小市さんの胸の奥には、強い想いがありました。

03次の世代につなぐ。
養殖への挑戦。

近年、環境変化などの影響により天然のガゴメ昆布が減っている中、小市さんは養殖にも積極的に挑戦 しています。海の恩恵を授かるからには育てる責任 が伴うもの。小市さんは、日々研究の毎日です。
こまめに書き記すノートをめくりながら「ガゴメ昆布は手をかけてもなかなかうまく育ってくれないんだ」と困り顔。「 若い世代も一生懸命」と目尻を下げる小市さんの表情からは、お孫さんのお話をされる時と同じ ように、ガゴメ昆布への愛情がにじみ出ていました。

04ガゴメ昆布に懸ける、
健康への想い。

長年ガゴメ昆布漁を続ける中で、収穫だけでなく養殖など種の保存にまで尽力するのには、小市さんの人々の健康への想いがありました。
デコボコが特徴のガゴメ昆布はネバリがとても強く、健康成分フコイダンの含有量が他の昆布を大きく上回り、その性質も非常に良質であることが分かっています。「家族や仲間、そして多くの人の健康が一番」と語る小市さん。
自分たちが大事に育てたガゴメ昆布が、沢山の人たちの健康に役立てられることを願いながら、小市さんは今日もガゴメ昆布と向き合っています。

プロフィール

小市公三さん(68歳)
北海道函館で漁を生業とする、この道53年のベテラン漁師。
近年はガゴメ昆布の養殖にも挑戦、その貴重な品種の保護に取り組む。若手漁師からの信頼も厚く、良きリーダーとして後進の育成にも励んでいる。(※年齢は取材当時です。)