Vol.23 京都王道写真映えさんぽ その1

Update: 2023.3.29
#虫眼鏡さんぽ

京都王道写真

“映え”がもてはやされるようになった昨今。京都の美景スポットは、SNSが世に出現した時代よりも遙か昔に生まれたもの。今回は、東山~京都駅~伏見稲荷へと王道写真映えスポットを訪ね歩いてみました。

欲望を抑えて願いを叶える、カラフルなくくり猿【八坂庚申堂】

古都情緒が香る東山を散歩。八坂の塔に向かってまっすぐにのびる夢見坂を歩いていると……庚申信仰発祥の地、八坂庚申堂(やさかこうしんどう)の山門が現れました。

八坂庚申堂
本堂の屋根や山門の上に、見ざる、言わざる、聞かざるの三猿を発見

山門をくぐると、境内はこぢんまり。本堂や手前の小さなお堂に色とりどりの手鞠のようなものが鈴なりにぶら下がっています。


境内
着物姿の女性の姿も多く見かけました
境内
現代アートのようにも見えます

手鞠のようなものの正体は、「くくり申」といって、仏様のお使いである申(猿)が手足をくくられている姿。人間の心に潜み、溢れだそうとする欲望をくくりつけて抑えることを意味するのだそうです。絵馬やお守りのようなもので、授与所で購入し、願いごとをしたためて奉納します。欲望を我慢して一心に願えば、願いごとが成就するそうです。

境内
お寺の概念をくつがえす、カラフル&ポップな境内

本堂で手を合わせたあとふと目線を上に向けると、軒下にくくり申のモチーフを発見。


お猿さん
デフォルメされた3匹のお猿さん
お猿さん
お香を供える香炉を支えるお猿さんを発見

授与所にはくくり申のほか、開運招福の三猿や、手先の器用な猿にあやかった技芸上達の指猿も。「我慢じゃ!」とデザインされたシールがあるのもユニーク。お財布に貼ると散財を防げるかも!?

土鈴/三猿
写真左は土鈴、右は開運招福の三猿

食べたい、買いたい、欲しい、出かけたい、あんなふうになりたい……日々よどみなく溢れ出してくる欲望の数々。お参りをしたらなんだかすっきりとした気分に。


眺望抜群!京都駅構内の穴場スポット【空中径路】

つづいてはJR京都駅へ。京都駅は1877(明治10)年に開業し、140年余りの歴史をもつ駅。初代駅舎は赤レンガの西洋建築で、現在の駅舎は1997(平成9)年に建てられた4代目。平安遷都1200年記念事業の一環として新築されたそう。

吹き抜けの空間
渓谷を表現したという吹き抜けの空間

窓に4000枚のガラスを使ったというスタイリッシュな現在の駅舎は、「歴史への門」をコンセプトに、平安京の碁盤の目や都の象徴である「門」をイメージして設計。
中央コンコースにV字型に広がる壮大な吹き抜けは、渓谷を表現。このビルの建築を手がけた原 広司氏は、大阪のシンボルの一つ「梅田スカイビル」や「札幌ドーム」を手がけた方だそうです。


エレベーター
エレベーターでどんどん上へ
高所から見下ろす
ゲートの手前から見下ろすと、かなりの高所に来たことを実感

エスカレーターを乗り継いで上へ上へと進んでいくと、「空中径路 Skyway」と書かれたゲートがありました。

空中径路
空中径路を散歩。意外と人が少なく穴場でした

ホテルグランヴィア京都の側と駅ビルのシンボルである大階段側とをつなぐ天空の回廊は、地上45mの高さ、全長は170mにおよびます。入場料は不要で、いつでも自由に行き来できるのがうれしいところ。

京都タワーを一望
中央の展望所から京都タワーを一望

中央の展望所からは、窓越しに京都タワーや東本願寺、西本願寺、八坂の塔、晩夏の風物詩で名高い五山送り火の全山などが織りなすパノラマビューが広がっていました。
空から差し込む光が幾何学的な影を落とす近未来的な空間と、ガラス窓の向こうに広がる古色蒼然とした寺社仏閣との対比が、悠久の歴史都市への想いをかきたてます。

後日、夜バージョンを体験しに再び空中径路へ。宇宙都市へのプロムナードのようでした。


ライトアップ
ライトアップされ、幻想的な雰囲気に
プロジェクションマッピング
大階段では壮大なプロジェクションマッピングも楽しめました

鮮やかな朱塗りの鳥居が連なる神秘の社【伏見稲荷大社】

ラストは、商売繁盛のご利益で有名な伏見稲荷大社へ。全国に3万社!もある稲荷神社の総本宮です。トリップアドバイザーの「外国人に人気の日本の観光スポットランキング」で6年連続一位に輝いたこともあるそうで、初詣の人出の多さは全国でもトップクラス。

伏見稲荷大社
修学旅行生たちの姿も見られました

壮麗な楼門をくぐって本殿で手を合わせ、本殿の裏手へとつづく石段を上っていくと、朱塗りの鳥居が連なる「千本鳥居」が現れました。


千本鳥居
行きは右側の鳥居、帰りは左側の鳥居を通るようです
千本鳥居
伏見稲荷大社を象徴する千本鳥居の中

鳥居と鳥居の間から光が差し込んで、とても神秘的!奉納されたばかりの鳥居もあれば、色あせて朽ちてきた鳥居もあり、今も昔も人々の信仰を集めていることが伺えます。

稲穂の紋様
釣り灯籠には稲穂の紋様が見られました

境内の随所で目にする狐の像は「白狐(びゃっこ)さん」といって、神様のお使い。白狐さんが口にくわえているものをよく見ると、巻物や稲穂、玉、鍵などさまざま。例えば巻物なら知恵、稲穂なら五穀豊穣を象徴しているのだそうです。

白狐
こちらは楼門の前に鎮座する白狐さん。鍵をくわえています

千本鳥居の先で待ち受ける奥社奉拝所には、そんな白狐さんがモチーフの絵馬がたくさん掛けられていました。

白狐
表情豊かな白狐さんの絵馬

デフォルトのキツネ目を眉に見立てて目や口を描き足すなど、奉納した人たちがそれぞれ自由に顔を描き足しているのがなんともユニークです。

せっかくここまで来たのなら、と奥社奉拝所から片道約1時間かかるという「お山めぐり」にチャレンジすることに。森の中に連なる鳥居をくぐり抜け、標高233mの稲荷山山頂・一ノ峰(上社神蹟)を目指します。

鳥居
鳥居の間からそそがれる光が爽やか

上へ上へと限りなく連なっていそうな鳥居は、異世界へのトンネルのようで最初はちょっぴりドキドキしましたが、鳥のさえずりが聞こえてきたり、取材時には鳥居の間で新緑が輝いたり、途中の四ツ辻では、京都市街の眺望が楽しめたり。歩き進むにつれ心が弾んできました。

京都市街
四ツ辻から望む京都市街

伏見稲荷大社の神様が降臨された神聖な場所で、稲荷山の山頂にあたる一ノ峰でゴール!たくさん歩いて、お参りして、心身を浄化できた気がします。


一ノ峰
稲荷山の最高峰、一ノ峰(上社神蹟)
果菓伊藤軒の串和菓子
「果菓伊藤軒」の串和菓子

帰り道は、参道でかわいい串和菓子をほおばって、糖分補給。往復約2時間強の、清々しいお山めぐりとなりました。

八坂庚申堂から京都駅、そして伏見稲荷大社まで、6km弱+お山めぐりのロングコースを踏破。時代を超えて守り継がれてきた京名所にはゆるぎない風格が漂っていました。


今回の虫眼鏡スポット(Google map)