レトロな佇まいにときめく老舗のカフェ。第2弾は、河原町から寺町まで足を延ばして王道の喫茶店で看板スイーツを堪能。空間デザインからメニューに至るまでフォトジェニックで魅力あふれる名店でした。
スイスの山小屋のような空間で味わうフレンチトースト【スマート珈琲店】
第2弾は、寺町通にある「スマート珈琲店」からスタート。レトロなコーヒーミルが目印です。


今から90年前の昭和7年、「スマートランチ」という名の洋食店として創業し、戦後になって喫茶店に。コーヒーは創業以来自家焙煎を続けているそうです。

深いチョコレート色のソファや、木の壁、レンガを配した店内は、スイスの山小屋をイメージしたそう。観光客と思しき一人客から家族連れ、常連さんらしき紳士まで、様々な人たちが思い思いの時間を過ごしていました。


壁に目を向けると、こんなプレートが。カフェテーブルをはさんで向かい合う男女は、おしゃべりに興じているのでしょうか、リラックスした雰囲気が伺えます。
ホットケーキは昭和の大スターも愛した創業以来のメニューとのことで惹かれましたが、この日はもう一つの看板メニューであるフレンチトーストと、ブレンドコーヒーのセットを注文しました。

きつね色のフレンチトーストは、外はカリッ、中はふんわり。別添えのシロップをトーストに回しかけると、さらりとしたシロップがトーストにぐんぐん染み込んでいきます。そうしてふたたびトーストにナイフを入れ、シロップをたっぷり含んだトーストをほおばると、やさしい甘さがじゅわ~っと広がります。美味しい♪

2階のフロアでは、ハンバーグや海老フライなど洋食のランチがいただけるとのこと。次回はランチに行こうと心に誓ってお店を後にしました。
京都を代表する喫茶店のテラス席で爽やかなレモンパイ【イノダコーヒ本店】
お次は南西方向へ進み、堺町通三条下ルにある「イノダコーヒ本店」へ。「コーヒー」ではなく「コーヒ」がお店の正しい名称です。創業は今から80余年前の昭和15年。小説家の谷崎潤一郎や昭和史に名を刻んだ大女優など著名人も訪れたという、京都の老舗喫茶の代名詞的存在です。


珈琲色の暖簾をくぐると、正面が本館ホール、左手に創業当時の面影を残すメモリアルルーム、細長い回廊の奥に旧館テラス席、そして庭の緑を臨むガーデン席が。蝶ネクタイ姿のスタッフが希望の席を聞いてくれたので、旧館テラス席へ。


アンティークレンガが印象的な回廊には、2羽のインコがいて、可愛い声でさえずったり、こちらを見て首をかしげたり、来店客の笑顔を誘っていました



旧館テラス席はゆるやかな弧を描く窓辺に明るい光が差し込むクラシカルな空間。ギンガムチェックのテーブルクロスが素敵です。この日はケーキセットを注文し、メレンゲとレモンクリームとが2層になったレモンパイを選びました。

レモンパイは、口のなかでシュワシュワと儚げに溶けていくメレンゲ、その下に甘酸っぱいレモンクリームの2層になっていて、爽やかな味わい。コーヒーは、ヨーロピアンタイプの深焙りブレンドの定番「アラビアの真珠」。ミルクと砂糖を入れてサーブするというのがデフォルトのスタイルなのだそう。酸味もしっかりあるので、レモンパイとの相性もぴったり。
宝石のような名物ゼリーポンチを青い光の中で【喫茶ソワレ】
ラストは木屋町の高瀬川沿いにある「喫茶ソワレ」へ。


青い照明に浮かび上がる幻想的な空間は、今から74年ほど前の創業当時から変わらないそう。音のない静謐な空間に、時間だけがゆっくりと流れていきます。


壁に掛かる美人画は東郷青児や佐々木良三など、初代オーナーと交流のあった画家によるもの。うっとりと眺めているうちにお待ちかねのゼリーポンチが運ばれてきました。


シュワシュワと儚げに弾けるソーダ水に5色のゼリーがゆらめき、まるで宝石のよう。お店の雰囲気と溶け合ったアートのような美しさにしばしうっとり。
メニュー表を見ると、「ゼリーポンチフロート」や「ゼリーワイン」などまだまだ気になるものがいっぱい!再訪決定です。
店名のソワレとは、フランス語で「夜会」とか「素敵な夜」の意味だそう。昼間だけれどヒミツの夜会にお呼ばれしたような、そんな高揚感に包まれながら非日常に浸れたひとときでした。


河原町から烏丸、そして寺町へ。6件の老舗カフェを巡った今回の虫眼鏡さんぽでした。
時代を超えて愛され続けてきた老舗たち。この先、何年、何十年と時が経って、今ある新しいお店が老舗となっていく時代にも、レジェンドとして存在していてくれますように。