Vol.13 買って帰りたくなる専門店さんぽ その2

Update: 2022.03.01
#虫眼鏡さんぽ

専門店

京都に数多ある「専門店」。毎日の暮らしに彩りを添えてくれるアイテムを扱う専門店を探した「買って帰りたくなる専門店さんぽ」の第一弾では、紙や布のアイテムをフィーチャー。「SOU・SOU足袋」「HIRAETH」「鈴木松風堂」の3つの専門店をご紹介しました。
第二弾の今回は、東山からスタート。カラフルな和小物を求めて歩きます。

日本の伝統を描く刺繍専門店・京東都 本店

本日の散歩は、東山のシンボル・八坂の塔の手前からスタート。

五重塔
石畳の彼方にそびえる五重塔。古都らしい情緒が漂う

「八坂の塔」こと法観寺の五重塔に向かってゆるやかにのびるこちらの道、「八坂通」との名前がありますが、「夢見坂」の別名も。なんともロマンティックな名前です。法観寺は聖徳太子が開いたと伝わる古刹(こさつ)ですが、太子がいつの日か京都に都が遷るという夢をご覧になったという伝説にちなみ、「夢見坂」の名前がついたといわれているそうです。八坂の塔手前に建つ八坂庚申堂の門前に「夢見坂」と刻まれた小さな石碑がありました。

さて。この夢見坂をそぞろ歩いていると、白地に赤色の刺繍をあしらった可憐なのれんが目に留まりました。

京東都
五重塔の刺繍がかわいい

お店の名前は「京東都(きょうとうと)」。京都の刺繍工房が展開する刺繍ブランドとのこと。

店内
繊細なデザインの「和片」が並ぶ

店内の壁一面には、刺繍製の小さな「和片(ワッペン)」がびっしりと並んでいました。お店の方に伺ったところ、ぜんぶで660種類を超えるそう!

和片
ユニークな表情の妖怪シリーズもありました

京野菜や京菓子、洛中洛外図といった京都でおなじみのモチーフのほか、昔話、縄文土器、恐竜、虫のシリーズまで、さまざま。

和片
虫や恐竜も刺繍になると可愛く見えます

例えば、虫なら人気の「かぶとむし」や「のこぎりくわがた」のみならず、「かいこ蛾」や「るりほしかみきり」など昆虫好きしか知らないかも?と思うような、ふだん出合う機会のない虫までが刺繍化されています。
「刺繍」というとエレガントな花々を描いた英国風の刺繍を思い浮かべますが、そんなイメージを打ち破るレアな着眼点にワクワクさせられます。

光を蓄えて暗闇で光る性質をもつという特殊な糸「蓄光糸」を妖怪シリーズの一部に使ったり、トンボの羽を本物さながらの透かし模様にしたりと、小さな和片に込めた遊びゴコロがキラリと光ります。

店内
大胆な構図の浮世絵や風神雷神の姿も

日本に受け継がれ、語り継がれてきたモノやコト、ストーリーの数々ってこんなにも魅力的なものなんだと、和片を通してあらためて気づかされました。

ディスプレイ
窓辺のディスプレイ。和片以外の和小物も豊富
サンプル
和片の活用法を教えてくれるサンプルも展示

「和片」はバッグやお弁当の巾着、リュックなど、布製のものに貼るだけではなく、たとえばスマホケースや手帳カバー、ノートなどに貼る楽しみ方もあるそうです。また、裏に金具をつけてブローチにして襟元に添えたり、ピアスやイヤリングにしたり。布マスクに貼ったりするのもおすすめだそうです。
好きな絵柄の和片をいくつかセレクトして手ぬぐいや布に貼れば、キャンバスに絵を描くように自分だけの物語が描けますね。
手の平にちょこんと乗るほど小さな和片から、和の世界がどこまでも広がっていくかのようです。


香りを聞いて愉しむインセンスの専門店・リスン

東山の京情緒を楽しんだあとは西に進み、四条烏丸界隈へ。複合商業施設「COCON烏丸」のなかをふらりと歩いていたら、ガラス張りのスタイリッシュなお店がありました。

リスン
ガラスの壁に「lisn」と書いてあります

ギャラリーかジュエリーショップかな?と思いながら扉を開けて中へ入ると、ふわりと奥ゆかしい香りに包まれました。火をつけて香りを楽しむスティックタイプの「インセンス」や、常温で香る「サシェ」を扱う専門店「Lisn Kyoto(リスン キョウト)」です。

店内
さざ波のような曲線を描くガラスが印象的。床は瓦

漆喰の壁とゆるやかな曲線のガラスで構成された空間は白と黒が基調になっていて、香りとけむりのゆらぎをイメージしているそうです。
「リスン」というお店の名前は、香りを愉しむことを「聞く」と表現する日本古来の言葉にちなんでいるのだと教えていただきました。

インセンス
カラフルなスティックタイプのインセンス

THE CHORD OF SCENTS
音を香りで表現した「THE CHORD OF SCENTS」

インセンスは、なんと150種以上!もあるそうです。たとえば、「さくらと若葉と潮風」「スコールと白い花」「露に濡れた緑」など詩情豊かな名前や、「深く広がるドの響き」「もこもこに触れる」など遊び心のある名前、ひとつひとつに名前がついています。名前から香りをイメージしたり、香りから名前をイメージしたり、そんな愉しみ方もできるかも。
1本単位での購入もOKというのがうれしいですね。

どれにしようか迷っていたら、スタッフの方がカウンター席に案内してくださいました。

リーフレット
リーフレットを見ながら好みの香りを探していく

「FLORAL」「GREEN」「CLASSICAL」といったカテゴリーに分かれているので、好みの香りが探しやすい!朝、昼、夜と香りを愉しみたい時間帯ごとに香りを提案してもらえたり、気になるインセンスに実際に火をつけて香りをお試しできたり。香りの奥深い世界を体感できました。

まだまだ安心してお出かけできない時期ですが、お気に入りの香りがあれば、自分の部屋にいながら香りの世界を旅することができますね。今日はこんな香り、明日はあんな香り、香りのプランを立てる時間も心を豊かにしてくれそうです。


版画作品をあしらった小箱の専門店・十八番屋 花花

続いては、寺町通へ。老舗が軒を連ねるこの通り、ついつい吸い寄せられてしまいます。
二条通を越え、日本茶の老舗・一保堂さんの風格あるたたずまいに魅入りながら、さらに北へ。さらりとゆれる素敵なのれんが目に留まりました。

十八番屋 花花
散歩の季節は10月初旬。秋の風趣を感じる意匠
店内
招き猫に迎えられ、靴を脱いで店内へ

店内の壁一面にカラフル&コンパクトな紙の小箱がずらりと並んでいました。

おはこ
整然と並ぶ「おはこ」。並べるのも楽しそう

こちらは、「十八番屋 花花(おはこや そうか)」というお店。
代々西本願寺の絵所を預かったという由緒ある徳力家京都徳力版画館が手がける和雑貨店です。版画作品をあしらった小箱や紙雑貨、陶器製の工芸品が並んでいました。

猫の土鈴
涼やかな音を奏でる猫の土鈴も

こちらの版画作品には、お店の中だけでなく街のなかで出会えることもあるそう。
スタッフの方によると、京都の有名な老舗茶商や帆布かばん店のロゴが、京都徳力版画館によるデザインなのだそうです。京都の老舗を陰で支える存在でもあるんですね。

おはこ
いろんな作風があって、きっと好みの1つが見つかりそう

ひとつひとつ手作りという「おはこ」は、手のひらに乗る小ぶりなサイズ。デザインは400種!もあって、棚に並べきれないものも含むとなんと1000種もあるそう。

12代目徳力富吉郎氏の作品を中心に、鳥獣人物戯画、江戸時代に活躍したカリスマ絵師・伊藤若冲や現在ご活躍中の絵師・木村英輝氏によるものなど絵柄がバラエティに富んでいます。あたたかみを感じる色合いにも惹かれ、ギャラリーに来たような気分でひとつひとつ見入ってしまいました。

絵柄
九条葱や賀茂なす、鹿ケ谷かぼちゃなど京野菜シリーズも

「おはこ」には絵柄を眺めるたのしみのほか、中身を「選ぶ」楽しみも。まずは、版画があしらわれた「フタ」を選び、次に「中身」を選びます。

中身
中もバラエティに富んでいる

そばの実入りの金平糖やそば茶のほか、抹茶ミルク豆、黒豆チョコ、琥珀、メモ帳、ハンカチ、折紙など種類豊富。フタと中身をかけあわせることで、自分好みのひと箱をカスタマイズできます。フタと中身のバリエーションを計算すると……1万通りくらい⁉

箱が空いたら、小物を入れたりして箱を再利用できるのもいいですね。

ひとつの絵に
2つの箱を合わせるとひとつの絵に

入り口ののれんや、棚の「おはこ」の一部はひと月ごとに替わるそう。
毎月訪れて版画を通して季節の移ろいを感じてみる、というのもいいですね。

京都の街の「買って帰りたくなる専門店」探し、第二弾はこれにて終了です。散歩の途中にもお茶の専門店やお漬物の専門店、お箸の専門店などを見かけました。まだまだ行き尽くせない専門店。いつかまためぐりたいものです。


今回の虫眼鏡スポット(Google map)