Vol.6 こだわりまち文字さんぽ その1

Update: 2021.12.15
#虫眼鏡さんぽ

店舗外観

お店の看板、道路標識、案内板……街のなかにあふれている「文字」たち。
人と人とのコミュニケーションの橋渡しをしてくれたり、未知の場所へといざなってくれたり、新しいことに気づかせてくれたり。「まち文字」は日々の暮らしになくてはならない存在です。

今回は、街なかに潜む「まち文字」を探し求め、京都の中心地を歩きまわってみることに。まずは、烏丸から祇園界隈を散歩して出会った、選りすぐりの「まち文字」をご紹介します。

老舗の軒上に注目!姉小路通は達筆看板のストリートギャラリー

烏丸通から寺町通間の姉小路通(あねやこうじどおり)を歩いてみると、京菓子店、表具店、柚味噌専門店、そばぼうろの店、画材店など風格漂う老舗のなんと多いこと!長い歴史を刻んできた老舗は、外観を眺めているだけでも見応えがあります。何より、軒上にある看板がすばらしい!味のある達筆ぞろいです。

まずは、こちら。漢字7文字の老舗です。

店舗外観
風にゆらぐ暖簾も絵になる

老舗の看板は、どうやら右から読むようですね。
「御菓子司龜末廣」と書かれているこちらは、茶人や文化人も御用達の京菓子店「亀末廣」です。
調べてみると、看板の文字はかの有名な書家・山本竟山によるものとのこと!

細部
看板に近づいて、細部を眺める

看板をよく見ると、周囲には文様や扇、海老、花などお干菓子の木型があしらわれています。右上角には「壽」の文字が! 遠くからなら見過ごしてしまっていたかも。なんだかとっておきの発見をしたようで、気分は上々。

さて。「亀末廣」から東へ進んでいくと・・・

店舗外観
建物のどこかに柚子の透かし彫りがありますよ

数軒隣の老舗で足を止めました。ダイナミックな筆づかいで「柚味噌」と書かれています。白味噌をベースに柚子の風味をきかせた柚味噌(ゆうみそ)専門店「八百三」です。
店名ではなく看板商品の名を掲げているところに、商品に対する自信と誇りが伺えます。窓の上には柚子の透かし彫りも見られます。

柚味噌を買いに、中へ。お店の方にお話を伺ってみると、看板は、美食家、陶芸家、芸術家……さまざまな顔をもつ北大路魯山人による書。外の看板は写しで、店内に本物がありますよ、と教えていただき見上げてみると奥の壁にありました!

柚味噌
写真左手前にあるのが「柚味噌」。柚子の形の陶器の器も素敵

こちらが正真正銘、北大路魯山人による看板です。味のある文字を見ているだけで、美味しそうに感じてしまいます。

八百三を後にし、さらに東へ。

今度は京町家に掲げられた、かすれが味わい深い文字を発見しました。

店舗外観
場所は麩屋町通と御幸町通の間

こちらは、「彩雲堂」という日本画の画材専門店。この美文字は日本最後の文人といわれる富岡鉄斎作だそうです。

魅力的な老舗の看板はほかにもあり、姉小路通はまるでストリートギャラリー!
「看板に偽りなし」という言葉がありますが、看板のこの重みを受け止めているからこそ、買い手の審美眼が光る京の都で、連綿とお商売をつづけて来られたのでしょう。


こんな場所にもグッドデザインあり!おしゃれ文字

「こだわりのまち文字」さんぽ。つづいては、お洒落なまち文字をピックアップ。
祇園の商店街でウィンドウショッピングを楽しんでいると……

ぽ
・・・・・・・「ぽ」?????

中に入ってみると、「ぽっちり」という名のがまぐちの専門店。舞妓さん柄、番傘柄など京都らしいデザインからモダンな柄まで、愛らしいがまぐちが並んでいました。

がまぐち
店内に並ぶがまぐち。どれにしようか目移りします

そうか!「ぽ」の文字上の屋根のようなデザインは、がまぐちの口金を表していたんですね! 心なしか、がまぐちを開ける音が「ぽ」と聞こえます。

「ぽっちり」から少し東へ。

くずきりで知られる「鍵善良房」さんがありました。
ショーケースを彩る和菓子に見とれていると、軒瓦の眩しい白色が視界に入ります。

軒瓦
清廉な白が清々しい鍵善良房の軒瓦

軒瓦にまで「菓」の文字が!!
こうした細部の意匠へのこだわりに、脈々と続いてきた老舗の粋を感じますね。

帰り道、骨董やギャラリー、文具店などが軒を連ねる寺町通を歩いていると……足元にもおしゃれ文字を発見。

水道メータ
「水道メーター」ではなく「水道メータ」!

京都市水道局のマークに囲まれた「水道メーター」の蓋です。

何の変哲もない蓋、というなかれ。レトロ感漂う文字がいい味出してます。しかも「水道メーター」ではなく「水道メータ」だなんて、時代を感じます。

量水器
老舗の多い寺町通は足元にあるモノたちも見逃せない

こちらは「量水器」。水道メーターを収納するボックスの蓋なのだそう。シンメトリーなデザインにセンスを感じます。鉄のさびれ具合もアンティーク感があって骨董店の多い寺町通にぴったり。

つい見過ごしてしまうような場所にも、こんなに洗練された文字がたくさんあるんですね。

今回の虫眼鏡スポット(Google map)