大正や明治の時代ってモノクロの世界をイメージするけれど、昭和の時代だって、令和の現在から見れば三十数年以上も前に幕を閉じたずいぶん昔のこと。ノスタルジックな「昭和レトロ」に魅了され、二度目のさんぽへ出かけました。
タイムトンネルをくぐって、ふたたび昭和の世界へ
今回は、地下鉄・東山駅からスタート。2番出口を出ると、道幅の狭い商店街が現われました。

昭和感たっぷり! 見上げると、看板に「古川町商店街」と書かれています。誕生したのは、昭和25年のよう。
「京の台所」といえば錦市場ですが、こちらはかつて「東の錦」と称され、栄えていたのだそうです。

「なんでもそろうみなさまのお台所」というキャッチコピーのとおり、青果店、鮮魚店、精肉店、雑貨店など昔から続いていると思われるお店と、イマドキの酒場やゲストハウスなど新しい施設が混在。昭和と令和が交錯した独特の空気感を醸しています。
タイムトンネルをくぐり抜け、次なる昭和を探します。
幾何学模様が印象的な鴨川沿いのレトロ建築
鴨川に架かる三条大橋を渡っていると、対岸にそびえるテラコッタカラーのレトロ建築が目に留まりました。

こちらは、京都の花街の一つ先斗町(ぽんとちょう)の中心的存在「先斗町歌舞練場」。毎年5月には芸妓さんや舞妓さんによる華やかな「鴨川をどり」が開かれる会場です。
建物ができたのは、昭和2年とのこと。前回の「1928ビル」同様、こちらも窓の配置がどことなくロボットの顔みたい。ぱっちりお目目のような八角形の窓がアクセント。個性的な幾何学形の窓は、当時流行していた建築様式を取り入れたのだそうです。

正面側にまわってみると、壁のデザインもアンティーク感があって素敵でした。格子のフチのところがカマボコみたいに盛り上がっているため、優美な花模様が際立って見えます。90年以上も前に作られたというのに、なんてモダンなの!
「どろぼう」を販売!?昔なつかし駄菓子店さん
三条通からナナメに北上して二条通へ。ひたすら西へと進むと、世界遺産・二条城が見えてきました。
その南隣に京町家を発見。

清々しい白暖簾に「うれしなつ菓子」の文字。「格子家」さんという駄菓子店でした。
暖簾の左側には、「名物 どろぼう」の看板が・・・!
これはいったいぜんたい、どういうこと???

店内には、懐かしのお菓子がたくさん並んでいました。
ぐるりと見渡すと・・・あ、どろぼう発見!!!

なるほど。「どろぼう」ってお菓子のことだったんですね。
お店の方に聞いてみると、創業は大正初期とのことで、「どろぼう」は当初からのお菓子。
「どろぼうしたくなるほどおいしい」というお客さんの誉め言葉からこの名が付いたのだそう。ユニークな由来ですね。
黒糖風味なので、口に入れた瞬間は「かりんとう」を思い浮かべますが、食感はサクッと軽やか。ひとつ、もうひとつと無意識のうちに手が伸びてしまうおいしさでした。
謎めいた建物の中は、昭和アイテムがざっくざく
南へと進んでいくと、賑わう「三条会商店街」に到着。ひっそりとした小道へそれてみると、ありました。昭和がぷんぷん香るお店が。

入っていいのだろうかとドキドキしつつも勇気をだして扉を開けると、店内にはアニメヒーローのフィギュアや、かつてはよく見かけたお菓子の看板など、ザ・昭和なアイテムがざっくざく!「いっぽう堂」というレトロ玩具店でした。
ロックミュージシャン風の店主に声をかけてみると、昭和アイテムは2階にもあって、その数、5万点以上!だとか。「小さい頃におもちゃを買ってもらえなかったうっぷんが大人になって爆発してしまって・・・」と笑いながら、自らの足で全国津々浦々の古いお店や土産店を訪ね歩き、昭和レトロなアイテムを集めたというエピソードを話してくれました。


廃線となった市電がカフェに変身
「昭和レトロ」との一期一会がうれしくて足が止まらず、ふと気づけば梅小路公園まで来ていました。

緑豊かで広々とした梅小路公園は、親子連れの憩いの場。とりわけこの一帯には子どもたちのかわいい笑顔があふれていました。
昭和45年に廃線になったという京都市電がカフェに!左手前がカフェ、左奥が休憩スペース。右の車両は電車グッズがいっぱい並ぶショップでした。

飴色の壁やカウンターに、ホッと落ち着きます。カウンター席でソフトクリームをいただきました。電車のなかでソフトクリームを食べたって背徳感は無用。だってここはカフェですから堂々と楽しめます。

街並みと調和する花見小路の丸型ポスト
アイスクリームを食べて、絶好調。足取りも軽く、どんどん進みます。
少し春めいた日差しにさそわれて、鴨川沿いを北上することに。途中、宮川町を経由して、祇園の花見小路を歩いていると・・・見つけました、昭和感のある物体!

懐かしのポスト! 現在はラグビー部員のようながっちり体型の四角いポストが主流ですが、こういうシュッとした円筒型のポスト(「丸型ポスト」と呼ぶらしいです)ってグッドデザインですね。周囲の建物と調和して上質な雰囲気を奏でていました。
銭湯で一日の疲れを流す
錦市場のあたりをぶらぶらと歩いていると、銭湯が目に留まりました。

こちらは、「錦湯」。昭和2年に建てられたということなので、先斗町歌舞練場と同級生ですね。こちらは純和風の京町家。


脱衣籠の横に置いてあるこちらの椅子、パーマ台ではなくてドライヤー!いまも現役で、なんと1回10円!価格も昭和で据え置きなのがうれしいですね。
少し熱めのお湯で体の芯から温まり、暖簾をくぐって外にでると、昭和の世界から令和へシフトチェンジ。あたりはすっかり暗くなっていました。
昭和ノスタルジーを思う存分満喫できた今回の休日でした。